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Line-ltd 2020.11 小論文に関して 

大学受験の推薦入試、AO入試、或いは国公立大の二次試験では、小論文が課せられることも多くあります。

大変、小論文がある。書き方の練習をしなきゃ…と慌てて対策を練ろうとする人も多いですが、そういう問題では済みません。「書き方」が問題ではなく、出題そのものを理解できるか否か、それが全てと言っても過言ではありません。

小論文テーマ

どんなテーマが出題されるのか? ほんのごく一部ですが以下掲載します。

◆ 東京女子大学

テクノロジーの発達が人間社会の豊かさに及ぼす影響について、どのように考えるか述べなさい。

◆ 近畿大学

「ペンは剣よりも強し」とは、言論は武力よりも大きな力を発揮するという意味の諺です。この諺を受けて、あなたが考えたことを、具体例を挙げて書いてください。

◆立教大学

異文化を理解するということはどういうことかについて述べ、さらにそれがどのように社会貢献につながるかについて、4000字以上5000字以内で論じてください。

◆ 上智大学

近年の国際社会について期待される法の役割について、具体的な例を挙げつつ論じなさい。

◆ 獨協大学

人工知能技術の発展と人間の役割について論ぜよ。

◆ 豊橋技術科学大学

「自動車の自動運転」について、社会的な面から賛成および反対の両意見を提示し、それらのいずれかについてあなたの考えを述べよ。

◆ 信州大学

「人間の成長における『影』の役割」と題して論述しなさい。

◆ 高崎経済大学

「共生社会」の実現に向けて、地域社会が解決すべき課題と原因について。

世の中に敏感に

「書き方」云々の問題ではないことがお分かりいただけると思います。

「書き方」はもちろん大事です。得点につながるように書く方法は知っておく必要があります。

しかし、それ以前に「何を言っているのか」が分からないと、その身につけた「書き方」を発揮する機会がないということになります。

共生社会、分からない。自動運転、分からない。国際社会における法、分からない。テクノロジーの発達、分からない。と分からないことだらけになると到底書くどころの話ではありません。

保護者説明会などでもお伝えしている通り、「世の中を知らない子は何もできない」のです。世の中に流れているニュースは無関係のことではないのです。

今年は世界的にコロナ一色だったような気もしますが、それでもアメリカでの大統領選挙とか、警察官による黒人暴行事件とか、注目すべき出来事はありました。詳細までは知らなくても良いですが、一通りのニュースに接して、何が起こっているのか、なぜそうなるのか、自分はどう感じるのか?等々…たったの3分5分でも良いから、頭を巡らせておく必要があります。

もはや、できるできないは、机の上にあるわけではないのです。これが令和の受験だと認識してほしいですね。

読解力は必要か?

小論文だから、読解力は必要ないでしょうか? そうとも言えないようです。以下、入試問題から。

◆ 九州大

西研「哲学は対話する」を読んで、筆者がなぜ「合理的な共通了解を形づくることが必要」だと考えているのかを説明し、自分の考えを論じる

◆ お茶の水女子大

アマルティア・セン(大門毅監訳)の「アイデンティティと暴力」を読んで、筆者の提示した問いに対する自分の答えを述べる

◆ 上智大

岸本美緒編「歴史の転換期」を読んで答える問題

◆ 青山学院大学

田中義明「山にあるから人が来る~地勢を生かしスポーツ愛好家を誘客~」を読んで、本文にあげられる活動は地域の活性化という点でどのような意義を有しているか、また日本でこのような活動を適用する場合、どのような課題が想定されるか述べ、展望を論じる

このように、書籍の一部を読み応える問題が多く出題されています。読解ができないと答えられないのは言うまでもありません。そのためには、やはり世の中が分かっている必要はありますし、恐らく「抽象的な概念」がないと読み進めることはできないはずです。

そして、多くの問題では「自分の考え」を述べることが必須とされています。ですので、上記で述べたように、世の中の動きを把握したうえで、どう思うのかを日頃から考える癖が必要だと思います。

自分が知らない世の中のことに関していきなり「自分の考えは?」と尋ねられても、答えられるわけがありません。

推薦入試狙い

推薦入試で大学に進学する、それ自体は全く反対しません。

ただ、推薦入試だとほぼ間違いなく小論文が課題になります。小論文を書くということは、イコール、世の中のことを知っているし、抽象的な内容の読解はできるし、自分の考えを述べることができる、ということでもあります。

そもそも、そうでないと「論じている」ことにはなりませんよね?

 

保護者説明会「国語の危機を救う具体策」